2024年12月23日
胃カメラとバリウム検査
お腹の症状があったり、胃がんが心配で検査を受けたいとお考えの方は多いと思います。でもバリウム検査や胃カメラ検査一体どっちがいいの?と迷う方に、それぞれの検査の特徴を順に説明させて頂きます。
胃カメラ検査とは
胃カメラ検査とは
胃カメラ検査は、鼻または口から小型のカメラを内蔵した柔らかくて細長いスコープを挿入し、食道や胃、十二指腸を直接画像で観察することができます。画像で病変を確認し、同時に病変から組織を採取して最終的な診断の確定まで可能です。
画像強調内視鏡
通常の白い光での観察以外に、特殊な波長の光を使用して血管や粘膜を見やすくする画像強調内視鏡(IEE)という機能があり、微小な病変や癌の発見に有用となります。
鎮静剤の使用が可能
口からカメラを挿入する胃カメラ検査は、喉を通過する際に舌の根本に触れるため、嘔吐反射が鼻からの胃カメラ検査に比べて出やすくなります。特に若い方ではこの反射の症状も強いため、鎮静剤(静脈麻酔)を使用しての検査あるいは鼻からの胃カメラ検査がおすすめです。
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バリウム検査とは
バリウム検査とは
バリウムとは、X線を通しにくい性質の重晶石という白い石を水に溶かした薬です。検査の前に2種類の液体を飲むのですが、一つ目が造影剤であるバリウム、もうひとつは胃の中を膨らませるために飲む発泡剤です。検査台の上で体勢を変えながらバリウムを胃の中で薄く広げて、胃の形や表面の凹凸をレントゲンで撮影します。
バリウム検査のメリット・デメリット
バリウム検査のメリット
検診車など検診に向いている
バリウム検査は検診車という検診専用のバスに機械を乗せて、企業や役所・学校などで検査を行うことができます。内視鏡検査と異なり病院まで足を運ぶ必要がなく、企業で行う集団検診と併せて一緒に検査が可能です。
胃の全体像の把握ができる
バリウム検査は、バリウムを胃の表面全体に行き渡らせた状態で撮影するので、胃の全体像の把握や胃の動きが悪い部分を観察することができます。そのため、胃の動きが悪い部分や胃全体の形態異常の評価は胃カメラ検査と比較して優れており、手術の前の全体の評価にも用いられます。
内視鏡検査よりも費用が安い
バリウム検査と胃カメラ検査を自由診療と保険診療別で比較した表です。
胃カメラ検査と比較して、バリウム検査は検査費用を抑えることが可能です。また、各自治体の行っている胃がん検診ではさらに費用を抑えることができます。大阪市の胃がん検診では、バリウム検査(胃部エックス線検査)が500円、胃カメラ検査(胃内視鏡検査)が1500円のご負担で受けることが可能です。各自治体に住んでおり、条件をクリアできれば誰でも低価格で検査を受けられます。当院も大阪市の胃がん検診の実施機関ですので、お気軽にご相談ください。
バリウム検査のデメリット
バリウムによる腸閉塞のリスク、腸閉塞の予防のために検査後に下剤の内服が必要となる
飲んだバリウムが腸の中で溜まって残ってしまうと、バリウムが固まり腸が途中で詰まってしまうことがあります。詰まってしまうと腸閉塞(イレウス)や腸内の圧力が高まり、腸が破れてしまうこともあります。腸閉塞予防のためバリウムを体外に出す必要があり、検査後に下剤を内服する必要があります。
放射線被爆がある
バリウム検査は、放射線を使用するので放射線被爆します。国立がん研究センターによると、バリウム検査での被ばく量は3.7~4.9mSv、胸の単純撮影は0.02mSvなので約200倍以上の被爆量となります。当然人体には影響のない被爆量ですが、できれば被爆は避けたいと考える方も多いと思います。
胃粘膜の色が分からない
バリウム検査では白黒の濃淡画像で結果を判断するため、胃粘膜表面の色はわかりません。病変の色調により診断が可能な病変も少なくありません。色という情報が手に入らないのは、より詳細な診断ができないためデメリットといえます。
要精密検査となると内視鏡検査が必須
バリウム検査で何らかの病変が指摘され、要精密検査となった場合、診断のため組織を取る検査が必要となります。診断に必要な組織を取る方法は内視鏡検査のみであり、最初から内視鏡検査を選択される方もいらっしゃいます。
胃カメラ検査のメリット・デメリット
胃カメラ検査のメリット
鎮静剤を使用して眠ったままの検査が可能
内視鏡検査の苦痛を軽減したり、不安を緩和させる目的で鎮静剤を使用することができます。鎮静剤の効果には個人差がありますが、多くの方が眠ったまま検査を終えることができます。
病変の凹凸や形状、色まで観察でき、小さい病変や食道がんを発見することができる
内視鏡はバリウム検査と異なり、胃や食道を直接観察することができます。そのため、検査で得られる情報は色や形など桁違いに多く、バリウム検査では見つけられない小さい病変や食道がんを発見することができます。
病変があれば組織の検査を行い、診断することができる
がんなどを疑う病変があれば、その場で組織の検査が可能で、最終の診断まで行うことができます。
被爆の影響がない
バリウム検査と異なり放射線を使用しないため、放射線の被爆を心配する必要はありません。
胃カメラ検査のデメリット
各薬剤でのアレルギー
内視鏡検査のために、鼻やのどの麻酔をします。非常に稀(数万人に1人)ですが、のどや鼻の麻酔薬で重篤なアレルギー症状(ショック)を起こす方がいます。必ず検査前にはアレルギー歴の有無や歯科治療時の麻酔でのアレルギー歴を確認させて頂きます。
嘔吐反射など苦痛が強い可能性がある
内視鏡検査で不安や不快に感じていることの最も大きな原因は、「オエッ」となる嘔吐反射と思います。口の奥に嘔吐反射が起きやすい部位があり、カメラがそこに触れると嘔吐反射が引き起こされます。このような苦痛を緩和するために、鎮静剤を使用したり、鼻からの内視鏡検査を行うことで苦痛を軽減することができます。
出血や穿孔などの偶発症のリスク
内視鏡検査はカメラ自体を食道や胃の中に入れるため、カメラでの物理的な接触や組織を採取する検査にて出血したり消化管の壁に穴が開く(穿孔)偶発症が起こる可能性があります。
まとめ
今回はバリウム検査と胃カメラの違いについて、メリットとデメリットに分けて説明をしました。バリウム検査も集団検診における有用性はあります。しかしながら、現在では内視鏡が細くなり画質もどんどん向上しており、鎮静剤の使用や鼻からの挿入などにより内視鏡検査のデメリットである「苦痛」がとても緩和されています。両方の検査を比較し、一度内視鏡検査を受けてみることも選択肢に考えてみてはいかがでしょうか。
最後になりましたが、当院では鼻からの内視鏡検査や鎮静剤を使用した内視鏡検査も行っております。また、大阪市の胃がん検診にも対応しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。