胃がん
胃がん
胃がんとは、胃の壁のもっとも内側にある粘膜の細胞が、何らかの原因によってがん細胞になり増殖を繰り返すことで発生します。胃がんは、大きくなるにつれて、徐々に胃の壁の外側に深く浸潤していきます。がんがより深く浸潤するにつれ、リンパ節や他臓器に転移するリスクが高まり、胃の外側にある大腸や膵臓、腹膜にも直接広がっていくことがあります。
胃がんは日本人に多いがんの1つで、新たにがんと診断された人数は大腸がん、肺がんに続いて3番目に多いです。男性のほうが女性より多く、男性では10人に1人、女性では21人に1人が胃がんに罹患すると推定されています。胃がんの発症は50歳過ぎで徐々に増加し、80歳代で最も多くなります。人口の高齢化により罹患数は年々増えていますが、最も早期の「粘膜内がん」の段階で発見すれば、99%以上の根治率が期待できます。そのため、定期的に内視鏡検査を行い、早期発見・早期治療がとても大切となります。
一般的な胃がんは慢性的な胃炎や萎縮を起こしている胃の粘膜から発生すると考えられています。原因はピロリ菌感染が多くを占めますが、喫煙や塩分の過剰摂取、栄養バランスの偏った食事なども要因と考えられています。ピロリ菌感染がある場合には、除菌により胃がんのリスクを減らすことができますが、除菌後も発がんのリスクは残ります。また、頻度は少ないですが、ピロリ菌感染のない胃がんの報告も増えています。
胃がんは、がんの小さい早期の段階では症状が現れることは少なく、かなり大きくなって進行した段階であっても、症状が現れにくいことがあります。そのため健康診断や胃カメラ検査などで、偶然胃がんが発見されることが多くあります。主な症状としては、みぞおちの痛みや不快感、胸やけ、食欲の低下、吐き気などがあります。病変部位からの出血を伴う場合は、黒色便や吐血、貧血などがみられることもあります。さらに進行すると、体重減少や通過障害を引き起こします。しかしこれらの症状は、胃炎や胃潰瘍などの病気でも起こり得るため、胃カメラ検査を受けなければ診断は難しいとされています。
胃がんの診断に有効な検査には、胃内視鏡検査(胃カメラ)と、バリウム検査(X線検査)があります。
胃内視鏡検査(胃カメラ)を行うと、疑わしい病変があればその場で組織をつまんで(生検)、がん細胞かどうかを顕微鏡で詳しく調べる「組織検査」を行うことが出来ます。また、胃がんの原因となるピロリ菌感染の有無も調べることもできます。
特に、ピロリ菌除菌治療後(萎縮性胃炎や腸上皮化生がある胃粘膜)は、胃粘膜全体に凹凸が目立ってくるため、色の違いを検出できないバリウム検査での早期発見はなかなか困難です。ピロリ除菌後の胃がんの早期発見・診断には胃内視鏡検査(胃カメラ)をお勧めします。
当院では、解像度の優れた最新の内視鏡システムを用いて、痛みや苦痛を最小限に抑えた胃内視鏡検査を行っておりますので、安心して受診ください。
治療には内視鏡的治療、外科的手術、薬物療法(抗がん剤治療)、緩和ケアがあります。胃がんの進行状況や患者様の状態などに応じて治療法を選択します。いずれの治療法においても、入院治療が必要となるため、胃がんが発見された場合には速やかに提携している経験豊富な専門の医療機関へご紹介させて頂きます。
リンパ節転移の危険性が極めて低いと推定される早期の胃がんに対して適用されます。この治療法では、特殊な内視鏡器具を用いて、病変部分を一括切除します。この治療法により根治が得られた場合は、高い長期生存率が見込めますが入院治療が必要となるため、提携している経験豊富な専門の医療機関へご紹介します。
進行した胃がんには、胃の一部または全部を切り取る手術が必要です。胃がんのできた位置により「幽門側胃切除術」と「胃全摘術」のいずれかが行われることが一般的ですが、医療機関によっては極力胃を温存する「噴門側胃切除術」や「胃局所切除術」などの特殊な術式がとられる場合もあります。最近では、医療技術の進歩に伴い、腹腔鏡手術やロボット手術などのより身体への負担が小さい手術法が主流になっています。
胃がんのステージによっては、手術後の再発を抑制する目的で行われる補助的な化学療法(抗がん剤治療)が行われる場合があります。これにより手術を単独で行った場合よりも長期的な治療成績が向上することが示されています。また、何らかの理由で手術を行うことができない場合には、化学療法のみを行うこともあります。
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