大腸がん
大腸がん
大腸(盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸)に発生するがんを、大腸がんといいます。大腸ポリープががん化して発生する場合と、大腸の粘膜に直接発生する場合があります。日本人の大腸がんの多くはS状結腸と直腸に発生します。
日本では1年間に約15万人が大腸がんと診断されており、男女の合計では臓器別で最も多い罹患数となっています。がんによる死亡数では女性においては最も多く、男女合計でも肺に次いで2番目に亡くなられる方が多いがんです。このように増加傾向にある大腸がんですが、早期の状態で発見できれば5年生存率はほぼ100%であり、早期発見・早期治療にて十分予防が可能な病気と言えます。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
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総数 | 大腸 | 肺 | 胃 | 乳房 | 前立腺 |
男性 | 前立腺 | 大腸 | 肺 | 胃 | 肝臓 |
女性 | 乳房 | 大腸 | 肺 | 胃 | 子宮 |
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
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総数 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓 | 肝臓 |
男性 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓 | 肝臓 |
女性 | 大腸 | 肺 | 膵臓 | 乳房 | 胃 |
大腸がんは生活習慣が発生に深く関わると考えられています。
特に赤肉(牛、豚、羊など)や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)の摂取、運動習慣の減少、飲酒、喫煙、肥満は大腸がんの発症リスクを高めるとされています。それ以外に、家族歴や遺伝との関連もあります。
早期の大腸がんや、大腸ポリープには基本的には症状はありません。大腸がんが進行しサイズが大きくなったりすると、便秘や下痢、血便、食欲低下、体重減少、貧血などの症状が出る場合はあります。大腸がんを早く見つけ出すには、気になる自覚症状がない段階から大腸がん検査を受ける必要があります。また、便潜血検査で陽性反応が出た方は、放っておかずに精密検査を受け、適切な治療を行いましょう。
大腸がんが疑われる場合には、以下のような検査を行います。
大腸カメラは肛門からスコープを挿入し直腸から盲腸までの大腸全域を直接観察することができます。大腸がんを確定診断することのできる唯一の検査です。
検査中に大腸がんが疑われる病変があった場合、病変の組織を採取し、病理検査にて確定診断を行います。また将来、がん化する可能性のある大腸ポリープ、特に「腺腫(せんしゅ)」と呼ばれるポリープを認めた場合にはその場で切除することが可能です。将来的な大腸がんの発生を予防することができます。
「つらい」「しんどい」というイメージのある大腸内視鏡検査ですが、当院では少しでも苦痛が軽減できるように鎮静剤の使用など可能な限り苦痛を軽減した検査を行っております。お気軽にご相談ください。
簡便であることから、大腸がん検診でも行われている検査です。採取した便に血液が混じっていないかを調べます。ただ、便に血が混じっていないという判定(陰性)であっても、大腸がん・大腸ポリープおよびそのほかの疾患がないという証明にはなりません。あくまで、スクリーニング検査です。また、便に血が混じっているという判定(陽性)であっても、追加の精密検査として大腸カメラ検査が必要になります。
大腸がんの治療法は、がんの進行度合いに応じて選択されます。以下は主な治療方法です。
大腸がんがごく早期のもの(ステージ0〜ステージⅠの一部、リンパ節転移のリスクが低いもの)と診断された場合には、まずは内視鏡的治療が行われます。大腸カメラから特殊な内視鏡器具を挿入し、病変をひとかたまりで切除します。病変の大きさなどで治療方法はポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などに分かれます。
ポリペクトミーは、大腸ポリープに「スネア」と呼ばれる金属の輪っかをかけて病変を絞めあげ、電気を流して大腸ポリープを焼き切る方法です。EMRは、細い針を使ってポリープの下の粘膜下層に特別な液体(例:生理食塩水やグリセリン液)を注入し、病変部を膨らませてからスネアで絞めあげ、電気を流して切除します。ESDは、EMRと同様に粘膜下層に特殊な液体(例:生理食塩水やヒアルロン酸)を注入し、安全域を確保した上で、特殊な電気メスを使用して、病変のある部分を薄く剥ぎ取ってくるような治療法で、より大きな病変に対して行われます。ポリペクトミーやEMRは外来でも治療可能ですが、ESDは専門施設で入院して行われることがほとんどです。
切除した病変を病理検査で調べた結果、リンパ節転移のリスクがあるような病変では、追加の外科手術が必要となる場合があります。
リンパ節転移のリスクのある早期がんや、進行した大腸がんに対しては、がんを含めて大腸の一部分ごと切り取る外科的な手術が行われます。また、手術の際に周りのリンパ節も併せて切除したり、遠隔の臓器への転移がある場合でも外科的治療を行う場合もあります。手術方法は、従来よりあるお腹を大きく切る開腹手術や、近年主流となりつつある傷が小さく済む腹腔鏡手術及びロボット支援下手術などがあります。肛門に近いがんの場合には、人工肛門が必要となることもあります。
大腸がんのステージによっては、手術後の再発を抑制する目的で行われる補助的な化学療法(抗がん剤治療)が行われる場合があります。これにより手術を単独で行った場合よりも長期的な治療成績が向上することが示されています。また、転移があるなど何らかの理由で手術を行うことができない場合には、化学療法のみを行うこともあります。
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