急性腸炎・感染性胃腸炎
急性腸炎・感染性胃腸炎
感染性腸炎とは、細菌やウイルスが原因で引き起こされる腸炎で、細菌やウイルスが口から入り、胃腸に感染した状態です。主にウイルス性腸炎と細菌性腸炎にわけられ、夏には細菌性、冬にはウイルス性の胃腸炎が多くなります。感染経路は、ウイルスや細菌に汚染された食品や水、手指から口に触れることや、感染者の吐物や便などに含まれる病原体の飛沫感染や接触感染などによって周囲の方へと広がります。
感染性胃腸炎の典型的な症状は、下痢や悪心・嘔吐、腹痛などがあります。成人では下痢、小児では嘔吐が多いと言われています。原因となる病原体によっては、発熱や血便などの症状を起こすこともあります。重度の下痢や嘔吐の結果、脱水となり点滴や入院での治療が必要となる場合もあります。特に体力や免疫力が低下したお子さんやご高齢の方は、重症化する可能性もあり注意が必要です。
急性胃腸炎を引き起こすウイルスとしては、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどが挙げられます。いずれも感染者の吐物や唾液、便などに含まれるウイルスの飛沫感染と接触感染によって感染が広がり、とくに冬から春先にかけて増える傾向があります。
細菌による食中毒(細菌性腸炎)は、気温が高く、細菌が繁殖しやすい6月から9月頃の夏季に多く発生します。原因となる細菌には、カンピロバクター菌、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌(O157)などがあり、細菌に汚染された水や食品を摂取したり、細菌が付着している手指が口に触れたりすることで感染します。たとえば、加熱不十分な鶏卵や肉、魚などを食べることで付着しているサルモネラ属菌を体内に取り込んでしまうといったことは食中毒の代表的な原因です。また、鶏肉はカンピロバクター菌の保菌率が高く、保菌している鶏肉を、生や加熱不足で食べることにより少量でも感染します。腸管出血性大腸菌(O157)は、牛や豚など家畜の腸内に生息しており、これらの糞便に汚染された食肉からの二次汚染により、牛・豚肉及びその加工品、生野菜など、多くの食品が原因となる可能性があります。感染力が強く、10~100個程度の少量の菌でも食中毒を起こし、人から人へも感染します。
免疫力が高く、健康状態が良好な方は、感染性胃腸炎にもかかりにくく、感染したとしても軽症で済むことが多いです。胃腸にいる乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が胃腸炎の原因となる病原体を殺菌してくれます。
細菌性腸炎に関しては、原因となる食品の保存・調理に注意をし、また調理をする際は手洗いを行い、食肉は中心部まで十分に加熱し、生野菜などはよく洗いましょう。古い食品は食べずに処分することも大切です。胃腸炎にかかりにくい人は、手洗いを徹底し、健康的な生活習慣を心がけています。
胃腸炎は多くの場合、細菌やウイルスへの感染が原因で発症します。感染経路は経口感染と接触感染で、最も基本的な予防方法は水と石けんによる手洗いです。手洗いを習慣にすることで、感染の機会を減らすことができます。また、免疫力を下げる原因となる食生活の乱れや睡眠不足、ストレスを避け、栄養バランスの取れた食事や適度な運動、十分な休養を日頃から心がけることが大切です。
まずは問診を行い、症状の経過や食事内容(1~2週間前まで確認)、周囲の感染症の流行状況(家族や学校など)、最近の旅行歴(特に発展途上国)、抗菌薬使用歴を確認します。
症状が強い場合には、体の炎症や脱水の程度を調べるため必要に応じて血液検査を行います。細菌性を疑う場合には、便や腸液の培養、ウイルス性の場合は便や腸液で迅速診断キットによる抗原検査、原因の特定を必要に応じて行います。ノロウイルス抗原検査は3歳未満と65歳以上の方のみ保険適応です。成人の場合は多くの場合検査は行わず、問診のみで対症療法を行います。
感染性胃腸炎の治療を行っていても、症状が1週間以上持続する場合には、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)の鑑別のために必要に応じて大腸内視鏡検査(大腸カメラ)も行います。
治療の基本は脱水症状を防ぐため、こまめな水分補給が大切となります。水分補給は電解質や糖がバランスよく配合された経口補水液が有効です。水分が取れなかったり、重度の脱水を起こしていたりする場合は、点滴による輸液を行います。
多くの場合、体内で増殖した病原体は便や吐物とともに排出されるため、一定の時間が経過すると自然に改善していくことがほとんどです。投薬は主に対症療法で、整腸剤や発熱に対する解熱剤の服薬など、症状を緩和させるための治療を行って経過をみます。また、下痢止めは、原因の病原体が腸に残りやすくなり、原則的に使用は推奨されません。細菌性腸炎を強く疑う場合には、抗菌薬を使用することもあります。
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