脂肪肝 脂肪性肝疾患
脂肪肝 脂肪性肝疾患
肝臓は使い切れなかった脂肪分を中性脂肪やグリコーゲンとして蓄える働きがあります。しかし、脂肪分が貯まりすぎるとやがて肝細胞にも影響が起こってしまいます。肝細胞の30%以上脂肪が貯まった状態を脂肪肝といいます。過食や運動不足、飲酒などが原因としてよく知られています。健康診断などで指摘されることも多い病気ですが、脂肪肝だけで症状が現れることはほとんどありません。
脂肪肝は、これまで飲酒にかかわるアルコール性のもの(ALD(アルコール性脂肪性肝疾患))と、肥満など生活習慣にかかわる非アルコール性のもの(NAFLD(NAFL/NASH))に分類されてきました。しかし、肝硬変、肝がんへのリスクとともに、脂肪肝自体が脳梗塞や心筋梗塞などの循環器疾患の原因として注目されていることなどから、代謝異常に関連する脂肪肝を、アルコール性、非アルコール性の違いにかかわりなく、またウイルス性肝炎などの病歴に関係なく代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)と定義することが世界的な肝臓に関する学会で2023年6月には発表されました。
これまで脂肪肝は、飲酒に関連したアルコール性のもの(ALD(アルコール性脂肪性肝疾患))と、肥満など生活習慣にかかわる非アルコール性のもの(NAFLD(NAFL/NASH))に分類されてきました。ここ数年の間に脂肪肝は、肝硬変や肝がんなどの肝臓の病気だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞などの血管疾患との関連が注目されています。
血管疾患のリスクである代謝機能障害(高血圧、糖尿病、脂質異常病、メタボリックシンドロームなど)があるかどうかで脂肪肝を分類する方法を2023年6月に国際学会で発表されました。
MASLDにおいても、脂肪肝の原因となりうる大量飲酒によるアルコール性肝障害などの他の原因となる肝疾患の除外診断は必要ですが、脂肪肝に代謝異常が合併していることが診断の条件となります。脂肪性肝疾患の現在の分類のフローチャートを以下に示します。
※代謝機能障害:肥満(BMI≥23)、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、内臓脂肪の蓄積(腹囲が男性90cm以上、女性80cm以上)
脂肪性肝疾患の原因は以下の通りです。
飲酒
1日あたり純エタノールとして男性で 30g 以上、女性では 20g 以上のお酒を毎日飲み続けるとアルコール性肝障害を起こすことがあるといわれており、これはビールならば男性で1日あたり750mL(大瓶1本強)、日本酒なら1合半、ワインはグラス 2 杯半、ウイスキーではダブルで1杯半に相当します。
生活習慣病
肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病が原因となります。
肥満の人では血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きがわるくなり(これをインスリン抵抗性といいます)、このことによっても肝臓で中性脂肪をたくさん作るように促されます。一般に、2型糖尿病や脂質異常症などのメタボリックシンドロームは脂肪性肝疾患の発症に影響を及ぼすといわれています。
遺伝的素因など
脂肪肝になり やすい遺伝的素因として、「PNPLA3」などの遺伝子の型が関係していることが報告されています。また、腸内細菌やサルコペニア(筋肉量の低下)も関連が報告されています。
肝臓の異常を示すAST、ALP、γ-GTPなどの肝酵素、アルブミンなどのほか、肝臓の線維化の状態を示す血小板数、肝臓の線維化マーカーなどをチェックします。また、代謝機能に関する血糖値、HbA1c、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロールなどの数値も確認します。これらの数値を組み合わせてFIB4-indexやNAFLD fibrosis scoreといったスコアリングシステムを使って肝組織の線維化の進行度、リスクなどを算出していきます。
肝臓の超音波検査では、脂肪肝の状態や繊維化の進行度合い、肝がんの有無などが確認できます。最新のエコー機器では、フィブロスキャンという検査が可能です。剪断波(せんだんは)と呼ばれる特殊な振動を使用し、肝臓の硬さや肝臓内の脂肪量を測定することが可能となります。
肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧を伴うことが多く、またメタボリックシンドロームとも密接に関連しています。脂肪肝の患者様は心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患で亡くなることも多いため、脂肪肝の治療では、メタボリックシンドロームを抑えることと肝障害の進行を防ぐことの両方に注意しなければなりません。治療の原則は、食事療法、運動療法などで生活習慣を改善することによって、背景にある肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧を是正することです。
食事療法
カロリー制限や、バランスの取れた食事を心がけ、特に脂質や糖質の摂取を控えることがすすめられています。身体に良さそうなイメージのある果物ですが、果物には果糖(フルクトース)が多く含まれており、多量の摂取は脂肪肝の悪化の原因となります。
運動
週に3-4回30分程度の運動が推奨されます。ウォーキングなどの有酸素運動だけでなく、筋トレなどのレジスタンス運動も有効です。筋肉は「第2の肝臓」と言われ、筋肉量を増やすことで基礎代謝が向上し、脂肪の燃焼が促進されます。
肥満がある場合には、体重の7%を目標に減量し、徐々に標準体重を目指すことが勧められます(例;体重 90kg の場合、まずマイナス 6kg を目標にしましょう)。
禁酒
アルコール性脂肪肝の場合、アルコール摂取を完全に止めることが必要です。アルコールは肝臓に直接的な負荷をかけるため完全な禁酒が必要です。
薬物療法
現在、脂肪肝自体を治療する特効薬はありません。
ビタミンEは抗酸化作用に期待して処方することがあります。高血圧などの生活習慣病がある場合には、それらの治療を行うことで脂肪肝も改善する可能性があります。
脂肪肝は適切な生活習慣の改善が予防・治療に関係してきます。生活習慣病や肥満のリスクがある場合は、早めに対応することが大切となります。
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