便潜血陽性
便潜血陽性
便潜血とは、便に血が混ざっていないか調べる検査です。
最近は、ヒトの赤血球中のヘモグロビンという色素にターゲットを絞って検出する「免疫学的潜血反応」という方法が主に用いられています。この方法を使って検査すると、上部消化管(食道や胃や十二指腸など)からの出血の際には、消化液の影響でヘモグロビンが変性して検出しにくくなるため、大腸からの出血のみを検出できることになります。したがって、便潜血検査で「陽性」となっている場合は、大腸に何かしらの異常が発生して出血している可能性を示しています。
便潜血検査は主に大腸がんのスクリーニング検査(大腸がんなのかそうではないのかを振り分ける検査)として健康診断や人間ドックなどでよく使用されています。
便潜血検査で1回でも陽性が出た場合には必ず大腸カメラ検査を受けることをお勧めします。
以下に検査の流れを記載します。
便を採取する容器に名前や採取日を記入する
健康診断を行っている機関や、医療機関などで便潜血検査のための容器が渡されます。最初に自分の便であると分かるように名前を記入しましょう。また、採取した便は日を追うごとに変性するため、採取してから2〜3日以内の提出が望ましいとされています。便を採取した日付も記入しておきましょう。
便を検査用のスティックで採取する
家庭のトイレは、便器内に水が張ってあることがほとんどです。便が水に触れてしまうと、正しい検査ができないため、水に触れないように排便しなければなりません。排便時の工夫として、以下の方法が考えられます。
【採便用シート】という、便器内の水面に敷いて排便することで水に浸かることなく便が採取できるシートも検査用キットと一緒に配布される場合もあります。便器の構造上、採取できるスペースがない場合や、通常と異なる姿勢では出しにくい人は、採便用シートを活用するとよいでしょう。
排便が完了したら、採便用のスティックで便の表面をこするようにして検体を採取します。
適切な場所で保管する
便の採取が完了したら、提出日まで涼しいところに保管しておきましょう。
便潜血検査は血液の混入を調査するため、血液の成分であるヘモグロビンが残っているうちに調べなければならないからです。
採取した便を保存する場所の環境や保存期間によって、ヘモグロビンが減少し、本来陽性だったものが陰性になってしまう可能性があります。便を採取したら、推奨された環境に保存しましょう。
便潜血検査では、一般に便の表面を専用のスティックで擦って採取することを2日間繰り返す「便潜血検査2日法」が多く用いられます。これは仮に大腸がんがあっても、便にまんべんなく血液が付着するわけではないので、回数を重ねることで「偽陰性(本当は大腸がんがあるのに便潜血陰性となること)」を少しでも減らすための取り組みです。
大腸ポリープから早期の大腸がん、進行した大腸がんと病気が進行するにつれて、便潜血が陽性となる確率は上昇しますが、「早期の大腸がん」があっても約50%程度しか便潜血検査では陽性とはならないことが報告されています。そのため一般的には大腸がんの発見率を高めるために、2日にわたり便の検査を行っています。
1回だけの陽性であっても、必ず大腸カメラでの精査を受けるようにしてください。
一般に便潜血検査が陽性で大腸カメラを受けた場合に、ポリープやがんなどが見つかる確率は約30~50%と報告されています。これには主に以下の2つの理由が考えられます。
病変の発見率は内視鏡を行う医師によって異なることが報告されています。アメリカ消化器内視鏡学会のガイドラインではADR(大腸腺腫発見率:大腸内視鏡検査においてどれくらいの確率で腺腫性ポリープが発見されるか、という指標)25%以上が検査医に求められる資質と記載されています。
異常のない健康な消化管からも、1日あたり1〜2ml程度の自然出血があります。この自然出血や、その他の良性の痔や腸炎などの疾患によっても、便潜血陽性反応が出てしまうこともあります。
便潜血検査は安価で簡便な検査ではありますが、早期の大腸がんの50%、進行した大腸がんの20~30%が見逃されてしまうことがわかっています。そのため、陰性だから大腸がんの心配はないとは言い切れません。下痢や便秘の症状がある方はもちろん、症状がなくても大腸がんのリスクが上がりはじめる40歳を超えたら、一度は大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。
当院の大腸カメラの詳細はこちらのページを参照ください。
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