肝機能障害
肝機能障害
肝機能障害とは一般に①肝細胞が壊れている(ASTやALTの上昇)あるいは②胆汁のうっ滞(γ-GTPやALP、ビリルビンの上昇)のどちらかあるいは両方が起こっている状態を表します。6カ月以内でおさまる肝炎を急性肝炎と言い、それ以上にわたって続く肝機能障害/肝炎を慢性肝炎といいます。急性肝炎は、一過性の炎症で完治するものもあれば、高度な炎症は治まるものの軽度の炎症が持続(=慢性化)し、慢性肝炎に移行するものもあります。10年、20年あるいはそれ以上炎症が続き、肝臓に線維(コラーゲンなど)が蓄積し、肝細胞が再生する力を失うと肝機能が低下し、肝硬変に進行します。
肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、肝臓にダメージがあり肝機能障害を起こしていても、特に症状を示さないことが多いです。重症の肝炎やかなり進行し肝硬変となったときに初めて自覚症状を認めることもよくあります。すなわち、肝臓の病気が見つかったときにはすでに病状が進んでいることも少なくありません。そうならないために、健康診断などで定期的に肝臓が正常に機能しているかどうかを確認することはとても重要なことになります。健康診断の結果、肝機能の異常を指摘され、要治療・要精密検査の指示のあった方は、症状がなくても医療機関を受診してください。経過観察の指示があった方につきましても、指示されている期間内に受診することをお勧めします。
肝臓はダメージを受けても再生力が強いため、軽度の炎症であれば持続してもあまり症状はでないことが多いです。そのため、脂肪肝やウイルス性肝炎などで慢性的に肝機能障害がある場合には、特に自覚症状は認めないことが多いです。
急性肝炎で短期間に強い炎症が起こる場合は以下のような症状が出現します。
肝臓は主に栄養の代謝や胆汁(食物の消化に必要な消化液)の合成、アルコールなどの毒素の分解・解毒作用など身体に不可欠で重要な働きを担っています。肝硬変へと進行すると、これらの肝機能の破綻に伴う症状が出現します。肝硬変では以下のような症状が出現します。
このような症状やお悩みがある方はご相談ください
肝臓病の初期には症状がないことがめずらしくありません。早期発見、早期治療のために肝臓病のリスクがないかをチェックして、当てはまる方は受診をお勧めします。肝臓に関するお悩みなど、気軽にご相談ください。
ウイルス性肝炎の既往や家族歴、常用されている薬剤、飲酒量、体重の変化、海外への渡航歴、食事歴など肝障害と関連のある内容の問診を行います。
肝機能(AST、ALT、ALP、γ-GTPなど)、肝硬変の有無(血小板、PT活性値、線維化マーカー)、肝炎ウイルスの抗体検査、自己免疫疾患の抗体検査、甲状腺機能などの項目を確認します。
脂肪肝や胆石、肝硬変、肝臓の腫瘍性病変の有無を評価します。
肝機能障害や肝炎の原因疾患により治療の方法は異なります。
治療の原則は、食事療法、運動療法などで生活習慣を改善することによって、背景にある肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧を是正することです。詳細は脂肪性肝疾患のページを参照ください。
上記のいずれかを満たす場合には、抗ウイルス薬(核酸アナログ製剤(内服)あるいはインターフェロン(注射))での治療適応となります。B型肝炎ウイルスは、治療でウイルスの増殖を抑え込むことは可能ですが、体内から完全に排除することはできません。お薬を中断することなく、長期間にわたって治療の継続が必要となります。ご自身のウイルスの状態、肝臓の状態をしっかり把握して頂いた上で安心して治療を受けて頂けるように努めます。
血中のHCV-RNA検査で陽性となった場合には治療の適応となります。現在、C型肝炎の治療としては、飲み薬(直接的抗ウイルス薬:DAA)が主流となっております。数種類の飲み薬が発売されており、それぞれ90%を超える治癒率を誇ります。C型肝炎ウイルスは、B型肝炎ウイルスとは異なり、一度治療が成功してウイルスが排除できた場合は、外部から再度感染しない限り、一生ウイルスが排除されたままで過ごして頂けます。
アルコール性肝障害の治療は禁酒となります。
治療には副腎皮質ホルモン(ステロイド)が第一選択で、他の免疫抑制剤なども使用されます。肝機能など数値が安定する最低量のステロイドなどを維持量として、長期間内服する必要があります。ステロイド内服中は、消化性潰瘍、満月様顔貌、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症などの副作用が出現することがあり、副作用に対する予防、治療を併用することが必要です。
現在のところ確立した根治的治療法はありません。ウルソデオキシコール酸(UDCA)は現在第1選択で使用されており、肝機能障害を抑制し、余命を延ばし、肝移植が必要になる時期を遅らせるとされています。90%の症例では胆道系酵素の低下がみられますが、進行した症例では効果が乏しいことも少なくありません。症状が出現している場合には、胆汁のうっ滞に基づく症状、特に皮膚掻痒、脂質異常症とビタミンDの吸収障害による骨粗鬆症に対する治療が重要になります。また、胃食道静脈瘤は肝硬変に至る前に出現することがあるので、定期的な内視鏡での観察は欠かせません。肝硬変となり病期が進み内科的治療に限界が生じた場合、肝移植の適応となります。
医療機関で処方された薬やドラッグストアで購入できる薬、サプリメントなどが原因となり起こる肝機能障害のため、それら原因となる薬剤を中止することで肝機能の改善が期待できます。
以下の条件を満たす方は無料で、肝炎ウイルスの検診が受けられます。
対象 | 大阪市に住民票があり、年度末時点で20歳以上の方(過去に肝炎ウイルス検査を受けたことがない方かつ大阪市肝炎フォローアップ事業に同意する方) |
---|---|
料金 | 無料 |
内容 | 血液検査(HBs抗原検査、HCV抗体検査) |
TOP