腹痛・胃痛
腹痛・胃痛
腹痛とは、腹部(胸部と骨盤の間の領域)に感じる痛みのことを指し、一般的に「お腹が痛い」と言われます。腹痛は消化器内科を受診する患者様の中でも最も頻度の高い症状で、実に多くの疾患が原因として挙げられます。「胃痛があります」と受診される患者様もとても多いですが、医学用語に「胃痛」という言葉はありません。これはなぜかというと、「胃のあるあたりが痛い」からと言って、本当に悪いのが胃であるとは限らないからです。消化器内科医は「心窩部痛(しんかぶつう)」という言葉を使い、みぞおちのあたり一帯の痛みを表す言葉としています。これを含め、腹痛は腹部全体をざっくりと9つのパーツに分けて考えます。
また、痛みの部位だけでなく、痛みの強さ、持続時間、痛みの性状(鈍い痛み(鈍痛)や差し込むような痛み(疝痛)など)、痛みの増悪因子などから疾患を絞り診断につなげていきます。
また、胃や腸といった消化器系に起因するものだけでなく、循環器系、泌尿器系、婦人科系などに起因する疾患もあります。
腹痛の部位によって、頻度の高い疾患と緊急性や重症度の高い疾患があります。以下は一般的な原因の一部です。
痛みの部位 | 頻度の高い疾患 | 重症度/緊急性の高い疾患 |
---|---|---|
心窩部痛 |
・逆流性食道炎 ・胃炎 ・胃潰瘍 ・機能性ディスペプシア ・胃アニサキス症 |
・心筋梗塞 ・胃がん ・虫垂炎の初期症状 ・膵炎/膵臓がん ・胆管炎 |
右季肋部痛 |
・機能性ディスペプシア ・十二指腸潰瘍 |
・胆石発作 ・胆のう炎 ・胆管炎 ・肝炎 ・肝臓がん |
左季肋部痛 |
・機能性ディスペプシア ・肋間神経痛 |
・膵炎 ・膵臓がん ・脾破裂/出血 |
臍周囲痛 |
・腸炎 ・過敏性腸症候群 |
・腹膜炎 ・腸閉塞(イレウス) ・大動脈解離 |
右側腹部痛 |
・腸炎 ・尿路結石 |
・大腸がん ・虫垂炎 ・大腸憩室炎 ・腎盂腎炎 |
左側腹部痛 |
・虚血性腸炎 ・尿路結石 ・腸炎 |
・大腸がん ・大腸憩室炎 ・潰瘍性大腸炎 ・腎盂腎炎 |
下腹部痛 |
・膀胱炎 ・便秘症/蠕動痛 ・前立腺炎 |
・直腸がん ・子宮/卵巣がん |
右下腹部痛 |
・過敏性腸症候群 ・尿路結石 ・子宮内膜症 |
・虫垂炎 ・大腸がん ・大腸憩室炎 ・子宮外妊娠 ・卵巣茎捻転/卵巣出血 |
左下腹部痛 |
・虚血性腸炎 ・過敏性腸症候群 ・便秘症/蠕動痛 ・尿路結石 ・子宮内膜症 |
・大腸がん ・子宮外妊娠 ・卵巣茎捻転/卵巣出血 ・潰瘍性大腸炎 ・大腸憩室炎 |
このように一言で「お腹の痛み」と言っても、消化器(消化管、肝胆膵)、婦人科(子宮、卵巣)、泌尿器、大血管など多数の臓器から症状を呈する可能性があります。
炎症反応(白血球やCRP):体内の炎症がどの程度あるのか、細菌の感染を疑うものかなど炎症の程度の評価ができます。
AST、ALT、ALP、γ-GTP、ビリルビン:肝臓、胆管に異常がある場合に上昇し、急性の腹痛の場合には胆管炎や胆嚢炎、急性肝炎などを疑った場合に行います。
アミラーゼ:膵臓の炎症がある場合に上昇し、急性膵炎を疑う場合に行います。
尿検査:腎臓や膀胱などの泌尿器領域の疾患(膀胱炎や腎盂腎炎、尿路結石など)を調べる際に行います。
腹部超音波検査とは、体の表面から耳には聞こえないくらい高い周波数の音(超音波)を当てて、その反射を画像化することで体内の臓器や血管の状態を調べることができる画像診断の一つです。
対象となる臓器は肝臓、胆のう、膵臓、腎臓です。CTと異なり放射線被爆がなく、どなたでも安心して検査を受けることができます。一方で検査前は絶食が必要であり、胃の空気や皮下脂肪が多い場合などは十分な観察が困難な場合があります。
X線CT(X-ray Computed Tomography)検査は、X線を身体の周りから照射し体内を透過したX線量をコンピュータで処理することによって体の輪切りの画像を得ます。身体のあらゆる部位の内部構造を画像化することが可能です。
一般のレントゲンでは得ることの出来ない詳細な体内の情報を得ることができ、腹痛の原因を調べるにはとても有用な検査です。当院では16列マルチスライスCTを導入し、検査時間の短縮や低被爆でより安全に検査を行うことが可能となっています。また、当院では診断精度の向上を目的とし遠隔画像診断を採用しております。撮影した画像は後日、診断センターに送信し、放射線科専門医の読影を依頼しています。
先端にカメラが付いた極細の内視鏡スコープを口や鼻から挿入し、食道・胃・十二指腸の粘膜を詳細に観察できる検査です。病変の位置や範囲、状態をしっかり把握でき、微細な病変の発見も可能です。
食道・胃・十二指腸を直接観察することで、器質的な疾患や症状の原因となる異常がないか、確実に確認することができます。また、なにか異常を認めた場合には検査中に組織を採取し、病理検査によって多くの疾患の確定診断が可能となります。
特に貧血や黒い便を伴う腹痛に関しては食道がんや胃がんを含む食道・胃・十二指腸からの出血が疑われるため、早めに胃カメラを受けましょう。
先端にカメラが付いた細い内視鏡スコープを肛門から挿入して大腸全域の粘膜を詳細に観察できる検査です。微細な病変を発見でき、病変の位置や範囲、状態をしっかり把握できるので有効な治療につながります。
大腸を直接観察することで、器質的な疾患や症状の原因となる異常がないか、確実に確認することができます。また、なにか異常を認めた場合には検査中に組織を採取し、病理検査によって多くの疾患の確定診断が可能となります。
また、腫瘍性ポリープを認めた場合には、その場でポリープの切除も可能であり、将来的な大腸がんの予防にもとても有用な検査です。特に血便、下痢や便秘を伴う腹痛は大腸がんの可能性があるので必ず大腸カメラを受けましょう。
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